2012年4月1日日曜日

がんの手がかりを得る検査(腫瘍マーカー) | 健康診断ガイド | よくわかる健康診断|プラスウェルネス [+wellness]


検査名称

CA125、CA19-9、CEA、α‐フェトプロテイン(AFP)、フェリチン、PSA(前立腺特異抗原)、TPA、その他のおもな腫瘍マーカー

基準値

CA125 35.0U(ユニット)/mℓ以下
CA19-9 37.0U/mℓ以下
CEA 5.0ng(ナノグラム)/mℓ以下(CLEIA法)
α‐フェトプロテイン(AFP) 10 ng/mℓ以下(CLEIA法)
フェリチン 男性21.0~282.0ng(ナノグラム)/mℓ以下 女性5.0~157.0ng(ナノグラム)/mℓ以下 (ラテックス凝集法)
PSA(前立腺特異抗原) 成人男性4.0ng/mℓ以下(CLIA法)
TPA 70.0U(ユニット)/mℓ以下(IRMA法=RIA固定法)

どんなときに受ける?

がん検診やがんの治療効果の判定、再発や転移を調べるときに受けます。

どんな検査?

体内に腫瘍ができると、血液や尿に含まれる、たんぱくや酵素、ホルモンなどが急激に増えることがあります。健康なときにはみられない物質が現れることもあります。これらの物質を腫瘍マーカーといい、物質の量や種類によって腫瘍の存在を知る手がかりになります。
腫瘍には良性と悪性があり、悪性腫瘍が「がん」です。腫瘍マーカーは、一般的にがんのスクリーニング(ふるい分け)検査として用いられています。また、がん治療中にマーカー値を引き続き測定して、治療効果の判定や再発の発見に役立てられます。
近年は、バイオテクノロジーの発展で、腫瘍マーカーの種類も増えています。数十種類ある腫瘍マーカーには、ある特定のがんに反応するものと、いくつかのがんに反応するものとがあります。通常、腫瘍マーカーは1種類だけではなく、何種類かを組み合わせて検査します。

検査の方法は?

採血による血液検査で調べます。


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検査で何がわかる?

腫瘍マーカーは、一般にがんが大きくなるほど体内でその量が増えますが、早期のがんではほとんど見られません。また、腫瘍マーカーが基準値を超えていても、すぐにがんの存在を意味するものではありません。良性の腫瘍や慢性肝障害、腎障害、呼吸器の慢性炎症、高血糖などの病気でも強い反応を示すことがあるからです。
がんであっても、ある程度大きくなるまでは腫瘍マーカーの血中レベルは基準値を超えない場合もあり、腫瘍マーカーだけでがんの診断をすることは困難だといえます。その他の血液検査、X線やCT、血液造影などの画像診断、生検などを組み合わせて総合的に診断する必要があります。
なお、基準値は測定法によって異なります。検査値をみるときには、どのような測定法が用いられたのかを確認することが大切です。
これらのことを踏まえて、いくつかの腫瘍マーカーについて詳しくみていきましょう。

CA125

卵巣がん診断の基本となるマーカーです。そのほか、子宮内膜症(しきゅうないまくしょう)、子宮腺筋症(しきゅうせんきんしょう)で敏感に反応して値が上がります。そのため、CA125はこれらの病気のスクリーニング検査や経過観察、治療判定の目安に利用されています。
それ以外でも、肺がん、肝(かん)がん、胆道(たんどう)がん、大腸がん、乳がん、子宮がん、卵巣腫瘍(らんそうしゅよう)などでも上昇することがあります。
また健康な人でも月経中に上昇することがあります。

CA19-9

CA19-9は、婦人科の病気では卵巣がん、卵巣腫瘍(らんそうしゅよう)、子宮内膜症(しきゅうないまくしょう)に敏感に反応して高値を示すマーカーです。
そのほか、消化器、とくに膵臓(すいぞう)・胆道(たんどう)のがんで高値を示します。ほかに胃がん、大腸がん、肝硬変(かんこうへん)、肝炎、子宮筋腫(しきゅうきんしゅ)でも値が上がります。良性疾患の場合は、36~100U/mℓと、比較的低い上昇を示すことが多いようです。


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CEA

大腸がんをはじめとする各種の消化器系がんや肺がんなどさまざまながんのスクリーニングに幅広く使われている腫瘍マーカーのひとつです。手術後、治療後の経過観察の指標として使われています。また、CEAは肝硬変、肝炎、膵(すい)炎、腎不全、甲状腺機能低下症(こうじょうせんきのうていかしょう)でも高値になることがあります。
女性は更年期以降、がんのリスクが高くなるので、50代以上は毎年受けておくことをすすめます。

α‐フェトプロテイン(AFP)

α‐フェトプロテインは、肝(かん)がんのマーカーとして知られています。そのほか、卵巣がん、胃がん、肝炎、肝硬変などのスクリーニングや診断、病状の経過観察に有用性の高い腫瘍マーカーです。
α‐フェトプロテインの値は、CLIA法では20~200 ng/mℓとやや高めの場合は、肝炎、肝硬変などの可能性が高いといわれます。3000 ng/mℓ以上では、高い確率で肝がんが疑われます。

フェリチン

フェリチンは、血液中に含まれるたんぱく質の1種です。白血病や骨髄腫などの造血系の腫瘍で陽性になる確率が高いものですが、肝臓がん、膵臓がん、大腸がんなど多くのがんで高値になるために、臓器や部位を特定することはできません。
またフェリチンは、体内の鉄と結合しているたんぱくなので、鉄欠乏症貧血では低値になります。ほかの血液検査と組み合わせてがんのスクリーニング(ふるい分け)検査やがんの経過観察に用いられるほか、体内貯蔵鉄量の状態を大まかに推定するためにも利用されます。
基準値が男性と女性とで大きく差があるのは、女性の場合月経による鉄喪失があるため、もとより貯蔵鉄量に差異があるからです。したがって、閉経後の女性は男性の値に近づいていきます。
フェリチンが陽性を示す確率が高いのは、白血病、肝臓がん、膵臓がん、腎臓がん、卵巣がん、慢性の炎症がある場合などです。また、肺がん、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫なども疑われます。


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PSA(前立腺特異抗原)

PSA は、前立腺に特異的にみられる抗原で、前立腺がんや前立腺炎、前立腺肥大などの病気で値が上昇します。前立腺の病気が疑われるときに、はじめに行われるスクリーニング(ふるい分け)検査として利用されます。
また、がんの進行に鋭く反応を示すので、病気の推定のほか、治療効果の判定や再発を観察するマーカーとしても用いられています。
PSAは、前立腺がんだけでなく、前立腺炎や前立腺肥大でも高値になるので、精密検査では、同じく前立腺がんに特異性をもつマーカーであるγ‐Sm(ガンマ・セミプロテイン)が併用されます。
しかし、がんの確定診断には前立腺の組織片を調べる前立腺生検が必要です。

TPA

TAPは、体内の腫瘍組織にみられるたんぱくの1種です。胃がん、大腸がん、肝細胞がん、膵がんなど消化器系のがんをはじめとして、肺がん、卵巣がん、膀胱がんなど、ほとんどのがんで高値を示します。
また、最近では、腫瘍以外のさまざまな病気でも高値になることがわかってきました。したがって、TAPだけでは、がんかそれ以外の病気かは区別できません。
しかし、TPAはがん以外の病気の場合、一時的に高値を示しても病気の改善とともに値が低下します。がんの場合は徐々に上昇する特徴があります。このように、病気のスクリーニング(ふるい分け)に役立てることができます。
値が基準値を超えた場合には、他の腫瘍マーカーや血液検査と組み合わせて病気を診断することが大切です。肝臓や膵臓系の病気が疑われたときは超音波検査、胃であれば上部消化管X線検査や上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)、大腸ならば下部消化管X線検査や下部消化管内視鏡検査などを行って診断します。

その他のおもな腫瘍マーカー

腫瘍マーカーには多くの種類があります。その中には特定の臓器のがんに反応するものもあれば、さまざまな臓器のがんに反応するものもあります。診断は、複数の腫瘍マーカーを組み合わせたり、血液検査や画像検査、病理検査(生検)など、ほかの検査結果を総合的にみて検討します。

名称

基準値

特徴

備考


CYFRA(シフラ) 23.5ng/mℓ以下 肺がんのうち扁平上皮がん、線がんなど非小細胞がんに特異性をもつマーカーです 卵巣がん、乳がんでも陽性を示します
Span‐1抗原 30U/mℓ以下 膵臓がん、肝細胞がんなど消化器のがんの診断補助、治療効果判定、経過観察などに有用です 良性肝疾患でも高値を示します
DUPAN‐2 150U/mℓ以下 膵臓がん、肝細胞がん、胆道がん、大腸がん、胃がんなど幅広いマーカーとして使われます 良性肝疾患でも高値を示します
NCC-ST-439 男性と50歳以上の女性4.5U/mℓ以下
49歳以下の女性7.0U/mℓ以下
もとは胃がんのマーカーでしたが、他の消化器がんや乳がんの目安にも用いられます 若い女性はやや高値を示します
BCA225 160U/mℓ以下 乳がんへの特異性が高いマーカー。卵巣がんや乳腺炎の判定にも利用されます 乳がんの進行、再発で値が上昇します
BFP 75ng/mℓ以下 消化器、泌尿器、生殖器など、さまざまな臓器のがんのマーカーとして用いられています  

ProGRP


46.0pg/mℓ未満 肺がんに特異性が高く、とくに肺小細胞がんの診断の指標として有用です 間質性肺炎、胸膜炎などの診断にも有用
γ‐Sm(ガンマセミノプロテイン) 4.0ng/mℓ以下 前立腺のマーカーです。前立腺がん、前立腺炎、前立腺肥大などの手がかりを得ます PSAとほぼ同等の検出率です
CA54/61 12.0U/mℓ以下 卵巣がんのときに高い確率で陽性となります CA125などとあわせて診断の指標に
BJP(オステオカルシン) 3.1~12.7ng/mℓ 多発性骨髄腫、慢性リンパ性白血病、原発性アミロイドーシスなどを反映します 尿で測定します
がん検診について

初期には症状がでないのが、がんの特徴です。自覚症状がないときから定期的に検診を受けることが、早期発見・早期治療につながります。
がん検診は、住民検診、職場の健診、人間ドッグなどで受けられます。
自治体が行う住民検診では、胃、肺、大腸、乳房、子宮など発生頻度の高いがんのスクリーニング(ふるい分け)検査を実施しています。
職場の健診や人間ドックでも、がんスクリーニング検査は組み込まれており、尿、便、血液の検査をはじめ、触診(しょくしん)、喀痰(かくたん)、腟分泌液(ちつぶんぴつえき)の細胞診、各臓器のX線検査、超音波検査などが行われます。
人間ドッグでは、これらの検査に加え、内視鏡、マンモグラフィー(乳房X線)、注腸X線、腫瘍マーカーなど、より詳しい検査を実施しています。さらに、肝臓、腎臓、前立腺といった、ほかのがんの検査項目が追加される施設も増えています。
早期発見を目的とするがん検診ですが、残念ながらすべてのがんについて検査をするわけではありません。もし家系的にがんにかかった人が多い場合は、あらかじめ検査施設に問い合わせて、自分が必要とする検査を追加して受けるとよいでしょう。
検診の結果、がんが疑われれば、再検査やCT、MRI、PETなどを使った精密検査が行われます。



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