2012年4月29日日曜日

産婦人科の基礎知識/続発性無月経


続発性無月経

続発性無月経はこれまであった月経が3ヶ月以上停止した場合をいいます。
一般的な無月経はこの続発性無月経になります。

続発性無月経はその程度により第1度無月経と第2度無月経に分けることが出来ます。
月経が発来するためにはエストロゲンとプロゲステロンの協調作用が重要になります。
エストロゲンの分泌は比較的保たれているがプロゲステロンの分泌に異常があり無月経となっていることを第1度無月経といいます。
一方エストロゲンとプロゲステロンの両者の分泌に異常があると第2度無月経となります。
前者が無月経の程度としては軽症といえます。

続発性無月経の分類や原因

排卵があり、月経が発来します。
排卵するのは卵巣ですが、卵巣から排卵させるために命令を出しているのが脳下垂体という部分です。 脳下垂体へ指令を出すのが視床下部です。 視床下部に始まる排卵の命令系統の中でどこかに異常があるとその下へ命令が伝わらなくなります。 結果的に無排卵、無月経などの月経異常という症状で目に見えてきます。

続発性無月経はその原因によって分けることもできます。
無月経と無排卵は無縁ではないので、続発性無月経の原因は排卵障害性の不妊症の原因ともいえます。


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視床下部性無月経

命令系統のスタート地点ですね。 向精神薬などの副作用で無月経となる場合は、薬剤性の視床下部性無月経であることが多いですね。 ストレスなどによる心因性の無月経や摂食障害や急激な体重減少性無月経もここに含まれます。 原因がはっきりしない場合の無月経は視床下部性無月経であることが多いです。

診断的治療(治療薬に反応すればそれが診断の根拠となること)としてクロミフェン療法があります。 クロミッドなどの排卵誘発剤を内服して、排卵が確認されれば視床下部性無月経ということになります。

下垂体性無月経

下垂体からはLHやFSHといった卵巣を刺激するホルモンが分泌されています。
下垂体腫瘍による高プロラクチン血症は狭義の下垂体性無月経といえます。
分娩中や産後に輸血が必要となるくらいの大出血があると脳下垂体の血流が悪くなります。 そうなると、脳下垂体の機能が低下して結果的に無月経となることがあります。 出血による脳下垂体機能低下はSheehan症候群(シーハン症候群)とよばれます。

卵巣性無月経

卵巣に原因があり無排卵、無月経となる頻度は少ないです。 原発性無月経の原因であるTurner症候群も卵巣性無月経といえます。 その他、外科的な治療(卵巣腫瘍など)、抗ガン剤による治療などのあとに発生する無月経もあります。

多嚢胞性卵巣症候群

卵巣に沢山の卵胞が発育するのですが、排卵障害、無月経となる疾患です。
頻度も高く、不妊症の重要な原因にもなっていますね。


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子宮性無月経

子宮内の何らかの炎症により子宮内が癒着してしまっている状態に子宮性無月経となります。 (頻回の人工妊娠中絶手術などで発生することがあります) Asherman症候群(アッシャーマン症候群)や子宮内膜炎などです。

そのほか

異所性ホルモン産生腫瘍などによる無月経などが含まれます。

続発性無月経の診断

原発性無月経の診断と同じで系統立った診断を行う必要があります。

問診

診断のスタートはやはり問診となります。
年齢、これまでの月経歴、妊娠や分娩歴、現時点での妊娠の可能性、既往歴、手術歴、他科疾患や内服薬の有無などが特に重要です。 向精神薬で無月経となることもありますからね。 また生活や習慣、環境の急激な変化によるストレスの有無や体重の増減の程度なども確認します。 急激な体重減少も一時的な無月経を引き起こします。

診察

身長、体重、多毛の有無、乳汁分泌の有無、甲状腺腫大の有無などの全身の診察も重要です。
多毛からアンドロゲンの過剰分泌が予想されることもあります。
当然、産婦人科的な内診や経膣超音波検査などで子宮や卵巣の大きさや腫瘤の有無をチェックします。


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内分泌学的検査

血中ホルモンの測定などが含まれます。
LH、FSH、プロラクチン、エストロゲン、プロゲステロンをはじめとして甲状腺ホルモン、男性ホルモンなどをチェックします。 同時にP-testやEP-testで第1度・第2度無月経、子宮性無月経の鑑別を行います。 診断のためにホルモン負荷試験というものが行われることもあります。

その他の画像診断

高プロラクチン血症があり下垂体腫瘍などが疑われるときはMRIなどの画像診断も行われます。

続発性無月経の治療

続発性無月経の診断に当たってはかならず妊娠の除外を行っておく必要があります。
妊娠であれば対応が全く違ってきますので・・・。

高プロラクチン血症に対して

プロラクチン値を正常化するための治療がまず行われます。
そうすることで排卵、月経が再開する可能性があります。

第1度無月経に対して

内因性のエストロゲンが分泌されているので、クロミッドが比較的よく効きます。
ただし、18歳以下の若年者もしくは挙児希望がない場合は理論的にはホルムストローム療法が行われますが、若年者の場合は卵巣機能がまだ発達段階であることも多いためカウフマン療法も選択されます。 カウフマン療法やホルムストローム療法を3〜6ヶ月続けて、十分にホルモンの補充を行います。 その後内服をいったん中止しリバウンド現象を利用して、自然排卵を期待します。


ホルモンを補充し、定期的な月経周期の確立が目的であればカウフマン療法で十分です。 しかし、18歳以上の場合、もしくは挙児希望が強い場合はクロミッドによる積極的な排卵誘発になります。

処方例:
クロミッド(50mg)一回一錠、一日一回食後に内服 月経周期5日目から5日間
    これで排卵しない場合、倍量まで増量します。

無月経期間が半年から1年以上になると、クロミッドやエストロゲン、プロゲステロン製剤に反応しない場合も多く、最初は排卵や出血が見られなくても数ヶ月は続けてみる必要があります。 クロミッドを半年間ほど使用しても排卵せず、挙児希望があるときはさらに強力な排卵誘発剤であるhMG-hCG療法を行います。

第2度無月経に対して

カウフマン療法を3〜6ヶ月行います。
治療後に自然排卵がなくても、第1度無月経となっている場合もあります。 第2度無月経から第1度無月経に移行した後は、ホルムストローム療法やクロミッドによる治療を選択することもあります。 カウフマン療法を行ってもなかなか排卵周期がもどってこない難治性無月経も存在します。 この場合、挙児希望がなければ長期間無月経の状態とならないように、2〜3ヶ月に一回の消退出血だけを起こしつつ経過を観察します。



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